尿失禁


2、3才でおむつが取れ、以後随意に排尿できるようになり、人はこの自然現象に以後注意を向けませんが、分娩や更年期を機に突然尿失禁を経験し以後これに悩む女性は500万人,40才以上の女性の実に40%以上の方に及びます。しかし、そのはずかしさゆえに長い間、伏せられ、話題にすらのぼりませんでした。尿失禁の問題点は衣服の汚染や尿臭に悩み、人前に出ることや旅行も制限され、日常生活を送る上で大きな障害であり、本人以外にはその苦悩は理解できないでしょう。生命に関係しないので今まで医学的にあまり問題にされませんでした。尿失禁はいくつかの種類がありますが、その大半を占める腹圧性尿失禁は運動や咳などで失禁するもので、原因は尿道抵抗の低下にあります。これは分娩で骨盤底筋が弱ることや、エストロゲンの低下による尿道粘膜の萎縮や柔軟性の消失および尿道粘膜の血管成分の萎縮が関係しています。下部尿道は膣と同様、胎児期の尿生殖洞というところから発生し、尿道粘膜や尿道平滑筋はエストロゲンの支配下にあります。エストロゲンの作用下では尿道粘膜や粘膜下組織が十分肥厚し、柔軟性があり尿道粘膜は完全に密着することができます(パッキング効果)。しかし、閉経後のエストロゲン欠乏は老人性膣炎と同様に老人性尿道炎を引き起こし尿道抵抗の低下につながり、ついにはその刺激により頻尿やもう一つの尿失禁の種類である切迫性尿失禁の原因にさえなります。尿失禁の治療ではエストロゲンは作用効果はマイルドですがその成因から、有用であることは間違いありません。重症では泌尿器科手術が必要な場合もあります。



女性は男性に比べ尿道が短いうえ、外尿道括約筋を含む骨盤底筋が弱いので失禁が起こりやすいことが上の図からも明らかに分かります。


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