エストロゲンと老人性痴呆




アルツハイマー病は通常65才前後から目立つようになり、その頻度は4〜5年ごとに2倍となります。
85才では25〜50%
にこの疾患がみられると言われ、その男女比は男1に対し女1.5〜3で、女性が長生きであることを考慮して統計処理してもやはり、女性の方が高頻度であります。H8,8,17の新聞各社からエストロゲンはアルツハイマー病を予防するという記事が大きく載っています。痴呆には大きく分けてアルツハイマー病と動脈硬化によるものがあります。さて報道されていたアルツハイマー病は以前から女性に多く、、女性ホルモンとの関連が予想されていました。今回の米国の大調査でエストロゲン長期投与群では1例の発症もなく、また、予防投与群でも何もしない群と比較して3分の1に発症を防げたことが載っていました。アルツハイマー病は脳が急速に萎縮してぼけがどんどん進行する恐ろしい病です。今後高齢化社会で特に問題となることが予想されていただけにエストロゲンで予防できることがわかったことは喜ばしい限りです。次に動脈硬化によるものはどうでしょう?動脈硬化により最初は小さな血管が詰まり脳梗塞ができそれがどんどん広がり痴呆になるのがそうですが、エストロゲンは悪玉コレステロールを抑え動脈硬化を予防する。その上血管壁への直接作用(一酸化窒素NO等の作用から)により血液の流れをよくする。ということは動脈硬化による痴呆にも十分,予防効果があるということです。それから、実は骨粗鬆症も痴呆と大いに関係しているのです。骨粗鬆症の一番の問題は”ぼけ”にあるのです。背骨が曲がったり、些細なことで腕が折れたりするのも困りますが、一番困ることは大腿骨頚部骨折を起こした時なのです。大腿骨が骨折すると寝たきりになります。すると外界からの刺激もやる気もなくなり、痴呆につながります。


上のグラフの出典は THE LANCET 348,1996.AUG
対照者1124名(平均年齢74歳女性)のSTUDY
エストロゲンを1年以上(平均13.6年)使用群は95歳でもほとんど脳は正常ですが、
NEVER(エストロゲン不使用者)は前述したように5年毎に倍々にアルツハイマーが増えて85歳以上になると悲惨です。


アルツハイマー病の何にエストロゲンが効くのかはまだ、はっきりは分かっておりませんがアルツハイマー病の発症を遅らせることは分かっております。
また、エストロゲンは神経細胞に働いて減退してきた記憶力をよみがえらす働きがあることが証明されています。

現在米国ではアルツハイマー病に関してエストロゲン使用の有無での全国的大規模な前向き調査が行われています。エストロゲンStudy



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