14回「札幌 下田塾」講義録

 

インフルエンザについて お話します。いつも言うようにインフルエンザは寒邪によって発症する疾患の為、温める風邪薬が多い漢方がよく効きます。ところが厚労省というのは漢方を一 切認めたくないのです。そういう情報は一般に伝えたくないのです。インフルエンザについて厚労省が言っているのは、まずワクチンを打ちなさい、次に咽頭粘 膜を取って診断しなさい、そしてインフルエンザだったらタミフルを使いなさいという事です。このタミフルが出てきたからやっと、ボルタレン等のN−セイドがライ症候群等を起こす危険があると認め始めたのです。それまで はNーセイドの副作用を言ってなかったのです。Nセイドを使えなかったら目先の症状をやわらげることも出来なくなるからで す。要するにウイルスの増殖を抑えるタミフルが出てきてから、ボルタレンを筆頭とするN− セイドは危険だということを厚労省はようやく認めたのです。そして今、アセトアミノフェンは大丈夫だと言っています。今は大丈夫です。そう言われて、アセ トアミノフェンを使う気になるのであれば、漢方を目指すことはお止めになったほうが良いのです。インフルエンザは寒邪です。温薬を使って温める必要がある のにNーセイドで冷やすと、表面上は熱は下がるけれども抵 抗力を落して悪化させるのです。ではアセトアミノフェンは大丈夫かと言うと、これから皆が多く使っていると脳症等が起こってきて報告されはじめると思いま す。ポルタレンはより強いN−セイドで副作用を早く起こし ました。アセトアミノフェンもやはり冷やす薬です。ウイルス性疾患の治療はそのウイルスを殺すか寒邪を除いて抵抗力を上げるかのどちらかしかありません。 そして何年か経つとタミフルが効かないインフルエンザが必ず出てくると思います。ワクチンを打ってもインフルエンザにかかる人は今でもいます。インフルエ ンザウイルスもワクチンの効かない新しいウイルスも出て来ます。だからワクチン、咽頭粘膜の検査、タミフルを使うというやり方に乗っからないで、インフル エンザの流行っているこの時に、ー生懸命漢方治療にトライしてマスターしてください。少なくとも、漢方治療をやれば、最初のうちは時間がかかるかもしれな いけれど、少なくともライ症候群等は起こさないで必ず治ります。今のうちにやっておかないと、将来ワクチンが効かない、タミフルも効かない、アセトアミノ フェンセも脳症が出てくるということになった時に慌てることになります。これは当然予想されることです。寒邪に冷やす薬を使うのですから。

今年のインフルエンザは どういう特徴があるのでしょうか。普通あまり流行していない年は鬼の霍乱のように非常に丈夫な人だけが罹るのです。そんな人ですから麻黄湯鉦になります。 今年は大流行です。あまり丈夫でない人も罹っています。そのためもちろん麻黄湯の人もいますが、葛根湯や桂麻各半湯の人も多いのです。これらの区別は脈が きちっととれれば脈診が一番簡単です。傷寒の脈がどこに打っているかを診ます。麻黄湯と桂麻各半湯なら左手の心の位置に傷寒の旅が打っています。この場合 の傷寒の脈の捉え方は、抑えないで指を置くだけで触れる脈で、浮いている脈です。葛根湯は大抵は肺の位置、まれに脾の位置に浮の脈が触れます。それと麻黄 湯と葛根湯は汗をかかないし、麻黄湯は寒がるけれど布団をかけると暑がります。葛根湯は寒がって布団をかけると気持ちが良いのです。桂麻各半湯は麻黄湯に 似ていますが汗をかいているのです。余計なことを考えなければこの三つで今年のインフルエンザは治ると思います。

では、漢方はどのくらい 良いかということは集団を特定できないので普通ではなかなか言いにくいのです。でも外来で診ていると、一年以上漢方を服用している人でインフルエンザの治 療を受けた人は1人しかいませんでした。風邪はひいたけれ どインフルエンザではなかったとかいう人はいます。今日診た人でインフルエンザ陽性だった人は、まだ漢方を半年しか飲んでいない人でした。でも、これだけ なら統計的な処理が出来ないのですが、実は私のところで知的障害者の施設を持っています。そこでは同一環境で117人 が生活をしています。薬を出したらスタッフが充分に管理して飲ませてくれます。そこで今日の時点で統計をとってみました。入院している人が二人いるので施 設にいるのは115人です。そのうち39人が一年以上漢方を飲んでいます。飲んでいない人が76人です。ほぼ12です。この39人 の中でインフルエンザが発症したのがたつた1人で、風邪症 状はあるけれどもインフルエンザは証明されなかったという人が5人 でした。一方76人の漢方を飲んでいない人達の中でインフ ルエンザが証明された人は9人で、風邪症状を出しているの が7人でした。閉鎖環境の中でこれだけ圧倒的な差が出まし た。風邪症状の5人と7人も罷患したのはインフルエンザだろうと思うのですが、咽頭粘膜で証明さ れるほどインフルエンザウイルスが増殖しなかったのだと思います。漢方を飲んでまる一年たつと人間の体というものは引き締まってきますね。そしてワクチン を接種している人が 109人で、していない人が8入でした。インフルエンザを発症した人は109人のうち9人 で、摂取していない8人の中では1人でした。あまり変わりないでしょう。でも私が初めて今のキころに来たと きはワクチンをしていなかつたのですが、1日で30人以上インフルエシザが発症しました。そういうことがあるのでワクチン は全く無意味だとも言えないのです。でももう一つ考えられることは、インフルチンザウイルスは人間から人間へ移りながら増殖していって、重症化する人が出 てくるのですが、この中で39人が防火壁になっているので はないかなということです。ワクチンを打ってもあまり差は無いのですが、無意味ではないだろうと思います。でもワクチンはいつまで効くか分からないので す。そして何か病気があってその基本的な病気を治す様な漢方を飲んでいる人は、夏もそうですが、ほとんどインフルエンザには罹らないということははっきり 言えるのです。これだけ圧倒的な差があるのです。皆さん日常的に自分の患者さんにこういう治療をしてください。一年以上漢方を飲んでいる人にインフルエン ザはどうですかと聞いても、いや何ともないよと言います。ひいても風邪気味ぐらいで終わってしまいます。一年未満の人はそうではないのです。一年以上飲ん でいる人でワクチンを打った方が良いですかと聞かれても打たなくても良いですよと指導しています。ワクチンを打っても打たなくても全然変わりはないので す。厚労省は漢方の効き目について初めから耳を貸そうともしないのです。厚労省は漢方が効くということになると面目丸つぶれになるからです。タミフルが効 かなくなって、アセトアミノフェンで脳症が出てきたら厚労省がどう弁解するか楽しみにしているのですよ。私のところではインフルエンザが流行っているとい えば流行っているのですが、流行っていないといえば流行っていないのです。いつも来ている人は罹らないのです。インフルエンザで受診する人はいつも来てい ない人達です。佐藤先生は毎週お出になっていますが、インフルエンザや風邪症状で来る人は全然見ていないでしょう。それから漢方を飲まないで鍼治療をする ことは原則としてしていないのですが、いろいろな事情で西洋薬だけで鍼治療をしている人が数人います。その人達も全然インフルエンザに罹っていません。だ から東洋医学的治療は、鍼治療も含めて長期的に継続すれば、人間の自然治癒力を亢める様ですね。今までお話した数値を統計処理すればそのことは多分はっき り出ますね。

今回から少しずつ1臓診断をしていきましょう。本当は肝実脾虚肺虚だとか五臓相関の診断を やっていけばよいのですが、一番大事なのは1臓の診断で す。
その人の生きている中心は五臓のうちの一つで何なのか、それも難しければ三経の診断で、太陰か少陰か厥陰かを少しずつ意識して いってほしいのです。1臓が診断出来ればあとは従たるもの ですから、くっついてきます。病気の中心はどこにあるかということは言葉を変えると、生きている中心はどこにあるかという事です。普通の時は病の中心と生 きている中心は同じなのですが、これが狂うのは不内外因の時です。だから不内外因はいつも難しいと言うのですね。当面の間は不内外因は考えずに病の中心と 生きている中心を一致させながらやっていきましょう。何故、今回1臓 診断について言うかというと、今は1臓診断が一番しやすい 時期だからです。脈診を一所懸命やっていますか。本当は私のところに来て何回か一緒にやると簡単に解るのです。立春から2週間ですが、26日から21日 ぐらいまでが一番脈診がしやすい時期です。今診ている全ての患者さんの脈を丁寧にとってみて下さい。少なくともその人の中心になっている1臓というのが解ります。春の脈というのが打っているのです。春の脈という のは本当に地中から湧き出すような脈です。他の五ケ所と違ってある一ケ所に必ずその脈が打っています。それを捕らえて、まずその1臓を中心に治療するのです。例えば肝実脾虚肺虚と脾虚肺虚肝陽上亢という のがあります。このパターンは結構ストレス社会には多いのですが、こういっても肝が主で脾や肺を押さえている場合と脾虚が最初にあって肺が虚したために肝 が上っている場合と、肺が虚して肝が上って脾が抑えられる場合とがあるのです。普通は肺も脾も太陰なので区別しにくいのですが、春のこの時期は脈診でちゃ んと区別できるのです。

この時期が過ぎると ちょっと又難しくなるのですが、他の診断法もあります。

今までも大まかな診断基 準をお話しました。太陰の人は本来はうつですが、元気なときはおおらかです。必ずではないのですが、額に横じわがあり、おだやかでゆったりしています。色 白の人が多いのです。朝調子が悪く起きた時、動きたくなくて死にたくなったりします。肺の人は呼吸器の症状や大腸性の下痢をしやすのです。脾の人は胃の不 調を訴えやすいし、結構甘いものを好みます。

厥陰の人は抑うつ的で す。うつと抑うつは違うんだということは前にもお話しました。元気なときは賑やかで華やかです。眉間に縦じわが二本あります。緊張感があり場合によっては 険しい顔になります。色は青っぽいというか青筋がたっているという雰囲気があります。厥陰が解るとその人は肝で決まりです。肝の人は夕方から弱いのです。 私は厥陰なので朝は元気なのです。朝早くから動いています。だから本当は夕方の講演が苦手なのです。普通のときは8時になったら寝ます。夕方疲れるのです。

少陰の人はわりと痴呆的 になります。元気なときはキビキビとしています。顔は太陰の人に似ており眉間に縦じわが一本あることが多いのです。眉間を中心に赤くなっていることもあり ます。調子の悪い時間帯はバラバラで一定していません。その時に仕事量とかストレスがどうかかるかで日によってバラバラです。

三経は調子の悪い時間帯 を聞くだけでも解りますね。心は後天性に損なわれて何らかの脳の異常や冠状動脈の異常を示すことが多いのです。腎は大抵は老化現象、あるいは全くの先天性 の異常です。これら三つのグループを区別して太陰は肺か脾か、厥陰は肝で決まりですが、少陰は心か腎かを判断します。そして、脈診をして一致すればそれで1臓診断が出来上がります。

今回皆さんにお配りして あるものは王不留行〈オーフルギョウ〉と言って薬草の種です。これが種の中では一番気を持っているものの様なのです。ある程度術者の気が高まってくるとカ ブの種でも良いです。私はあまり効き過ぎる可能性があるときはカブの種を使います。でも最初にやるときは王不留行の方が良いと思います。1臓診断ができたら出来るだけ強い症状のある人にシルキーポアを小さく切っ てそれで王不留行を耳の穴に付けて、軽くもんでください。二週間後には必ず何かの反応が出て来ます。肝だと思ったら肝の位置にします。耳の穴は下図の様に なっています。

腎、肝、脾の穴は堤の横 壁のところにあります。(耳の模型を見ると解りやすい。)肺、心は引っ込んだ底部にあります。耳穴は引っ込んだ構造をしていますので、少しずれても上から 揉むと穴に王不留行が入り込みます。ちなみに陽の穴は盛り上がったところにあり、陰の穴は引っ込んだ部分にあります。(体のつぼも同じです。)慣れてくる と瞬時に指がそこに行きます。耳の鍼も本当に劇的な変化を示します。極端な場合は曲がった指がその場でまっすぐになったりします。

 今日は柴胡桂枝乾姜湯 からです。私の講義は難しいとよく言われますので、出来るだけやさしく解る様に工夫してみます。この処方は柴胡剤で桂枝一味は気の上衝があり、乾姜は下半 身の冷えがある人に使う薬だという事です。上半身が熱くなって下半身が冷えて、何らかの炎症があって柴胡剤を必要とする証です。大事なことは柴胡剤ですの で柴組なのです。だから実証 に対する処方なのです。何度も言いますが大柴胡湯は実証で小柴胡湯は中間証で、柴胡桂枝乾姜湯は虚証だと書いてある本がありますが、これはウソです。柴胡 桂枝乾姜湯の人は表向き「私は弱いのだという言い方」をするのですが、よく診ると実証なのです。上熱下寒の実証です。これはしょっちゅう私と一緒に診てい る人はすぐに解ります。上熱下寒だけでなく、他の所見もあります。上半身だけ発汗します。横隔膜から上であったり、乳頭線から上であったり、場合によって は首から上に発汗します。発汗するだけでなくて熱いのです。聞くと必ず足の冷えがあります。これは手と足を同時に触ると足はひんやりとして冷たく、手はほ んわかと温かいのですぐ解ります。上熱下寒がはっきり解ります。そして胸脇微苦満があります。これはちょっと難しいのですが、ある程度慣れてこないと捕え きれないこともあります。私は手を置くだけで患者さんが重苦しい痛みを訴えますので、直ぐ解ります。慣れないうちは左手掌を当て右手拳で叩くと響きます。 そして胸脇微苦満はほとんど左には出ないで右に出ます。胸脇苦満は板状に張っていますのですぐ解りますが、胸脇微苦満は手を当てても重い感じだなという程 度です。叩いた時に患者さんは痛いのだということが初めて解るという程度です。微苦満がなければ叩いても痛がりません。舌苔はないと書いてある本もありま すが、柴胡剤を使いたくなるのですからあることが多いのです。それから結構事故の既往があることが多いです。それも「むち打ち」です。事故の急性期は不内 外因ですし、瘀血を伴いますから違う薬になることが多いのですが、今まで柴胡桂枝乾姜湯を使った人は、丁寧に話を聞くと9割ぐらいはむち打ちの既往があります。何故、時間の経ったむち打ちがこの 症状を出すか私もよく解らないのです。むち打ちの状態で仕方なしに一所懸命頑張っていることがこういう状態を生んでくるのでしょうかね。よく、むち打ちは 詐病と間違えられるのですが、補償をもらいたいのなら一つの医療機関で、精神科に行けと言われるまで延々と頑張るのです。本当に症状があって治りたい人は あちこちと病院をワンダリングします。もし皆さんのところにむち打ちの方がいたら9割 は肝で1割は腎ですので、それを診断し耳鍼してください。 そして柴胡桂枝乾姜湯を出したら二週間後にはかなり状態が変ります。それくらいはっきりしますね。そういうことであまり難しくはない薬です。大柴胡湯、小 柴胡湯は消炎剤としての働きが強いのですが、柴胡桂枝乾姜湯を肝炎等にいっぱい使っているかと言うとそうではないのです。小柴胡湯はあまり強い症状がなく ても使い得るのですが、柴胡桂枝乾姜湯はあまりにもはっきりした状態で、肝炎等には使わないようです。大柴胡湯はガチガチの胸脇苦満があって全然違う症状 です。柴胡桂枝乾姜湯は使う疾患がかなり限定されています。

次は安中散です。これは 前にも言いました様に残念ながらほとんどエキスはダメですね。何とか使うとすれば、安中散のエキスに何らかの制酸剤を加え茯苓末を加えたら、テキストに書 いてある通りの効果を何とか出すのかなと思います。安中散は成分を見れば解るのですが、桂枝も茴香も良姜も縮砂も温める薬で香りがあります。延胡索は香り はないのですが温める薬です。散のまま飲めば芳香成分も入るのですが、煎じたりエキス剤にしたら芳香成分は全部飛んでしまうのです。それでほとんど意味を なさなくなるのが一つです。 もう一つは牡蠣です。この場合の牡蠣は炭酸カルシウムの作用ですから煎じてしまうと意味を成さないのです。柴胡加竜骨牡蠣湯 や柴胡桂枝乾姜湯に入っている牡蠣はあくまでも微量金属ですから意味が違うのです。安中散の牡蠣は空炒りしたものを粉末にしたものです。まさに散として使 わなければ効き目がないのです。札幌だったらはるにれ薬 局で作ってくれます。札幌からの患者さんだけにそれを出 しています。その患者さんは今まで飲んだどんな薬よりも良いと言って飲んでくれています。ただどうしてもエキスで出したかったら制酸剤を加えて茯苓を原末 で加えたら、すこしは胃の働きを良くしてくれし、茯苓は効き目の弱いエキスの作用を少しまとめてくれる可能性があるのでちょっと良いかなと思います。現実 にエキス剤を使っても湯液の本に書いてある効き目は全くありません。私のテキストに書かれている説明は本来は散として飲んだほうが良いという立場で書かれ ています。1臓診断はもちろん脾ということですが、耳の脾 に鍼をして効果を出せる程の強い症状はありません。安中散はあっためて少し補いながらも少し刺激して胃を動かす薬です。その動かすものに応じるだけの脾や 胃の力がないとダメなのです。だから非常に胃が弱くなって何を食べても吐いたり下痢したりする人には全然効かないのです。

次は半夏瀉心湯です。こ れは胃薬とも言われますが、胃に作用する薬は入っていません。半夏は気に作用する薬です。強いて言えば、この半夏が胃に作用すると言えるかもしれません が、半夏は胃よりも肺に作用します。半夏瀉心湯は三黄瀉心湯と同じ考え方をします。出発が心か心の子分である小腸です。心はいつもいうように冠状動脈と脳 血管です。お腹を痛がって脈は心の位置にあって間違いなく半夏瀉心湯の人だと思ったら、耳の心の位置に鍼をすれば必ず好転します。心の位置は解りやすいで すね。耳の穴の手前にあります。探れば必ず痛がります。お年よりは冠状動脈疾患でも胃を痛がる事があります。昔ほ半夏瀉心湯を使ったのかも知れませんが、 そこまで診断がつけば西洋医学的治療を優先させます。いつも言うように冠状血管は脳です。三黄瀉心湯の状態は脳血管の急性期になっていますが、半夏瀉心湯 はその手前で心労をおこすような状態が続いていて、それが体に何らかの影響を起こしている状態です。ストレスはどちらかと言ったら肝労です。ちょっと気持 ちを切り替えたら何とかなる状態です。半夏瀉心湯の心労はこんな事をやっていたら誰だってまいるよという状態で、自分の気持ちの切り替えではどうにもなら ないものです。最近、心労で来た患者さんが居ました。子供も病気で、夫も病気で、更に自分の親も死にかかっていて、毎日その間を行ったり来たりしていると いうことがずっと続いているというのです。この様に気持ちの切り替えではどうにもならないのが心労です。心の火は意外に消えないのです。消えるときは死ぬ 時です。抵抗して一生懸命頑張ると、かえって心の火が燃え上がります。そしてすぐ傍の脾を焼いてしまい胃腸症状を起こします。

もう一つの場合は、何ら かの意味で心と小腸のバランスが崩れて小腸性下痢を起こした時です。大腸性下痢は裏急後重を伴いしぶり腹の下痢ですが、小腸性下痢はざっと出て、出た後は さっぱりします。昔、過敏性大腸と言っていましたが小腸性下痢もあるということが解り、過敏性腸症候群と言うようになりました。桂枝加芍薬湯や桂枝加芍薬 大黄湯が効かない過敏性腸症候群は小腸性下痢で、半夏瀉心湯が劇的に効きます。最初、漢方エキス剤が保険収載されたとき、半夏瀉心湯は入っていませんでし た。何年か遅れて収載されましたが、それまでは十二指腸潰瘍や胃潰瘍の適応は柴胡桂枝湯だけでした。柴胡桂枝湯は肝の薬で、これだけではどうしても治療で きないものがありました。
半夏瀉心湯が出てからカバー出来るようになりました。心労による潰瘍が半夏瀉心湯で治療できたのです。H2ブロッカーが出てからは潰瘍の治療はそちらが一番良いのですが、もうな らないようにするは柴胡桂枝湯や半夏瀉心湯が一番なのです。揮発成分が飛んでしまうので効き目が弱いのですが、なま生姜をおろして加えると良いみたいで す。以前はチューブ入りのねり生姜でも良いかと思っていましたが、やはり、なま生妻のおろしたものをかけたほうが良いのです。

チューブのねり生姜は揮 発成分が飛んでいるみたいです。ソーメンを食べるとき解りますね。チューブ入り生姜より、なま生姜をおろしたものの方が香があります。甘草瀉心湯は痛みが 強い時に使います。半夏瀉心湯と芍薬甘草湯を合方しても良いのですが、甘草未があれば半夏瀉心湯に甘草末を加えたほうが良いです。この様にちょっとしたバ リエーションをとれば、半夏瀉心湯というのは良い薬ですし、半夏瀉心湯だと思ったら、心の1臓 珍断で耳の鍼を加えればかなり手ごたえを感じると思います。

次が苡仁湯です。これは大事 な薬ですね。エキス剤では−番多く使っています。単純に薬味として使う生薬で一番多いのは附子で、一ケ月で10何 キロです。次がコージンです。エキス剤では一番が苡仁湯で、次は葛根加朮 附湯や抑肝散加陳皮半夏等でしょうか。やはりこういう患者さんが多く来てしまうのです。一番多い疾患はリウマチ系統です。次に変形性膝関節症、肩関節症、 むち打ちなどの痛みを訴えるもの、リウマチに伴う膠原病、その次がアレルギー疾患で喘息やアトビーです。その他、特殊な病気は数え上げればきりがないので す。

苡仁湯についてお話しま す。本来、急性疾患で、筋肉や関節に痛みを出すのは麻黄湯証です。麻黄湯証で節々の痛みを出す位置はリウマチの痛む位置と一致していると言いました。もっ とも初期は麻黄湯証でそのまま治ってしまうのが大部分ですが、麻黄湯の状態のままリウマチが発症すると麻黄加朮湯証になります。この段階で私のところに来 る人はほとんどいません。もうちょっと遷延すると麻杏薏甘湯証になります。麻杏薏甘湯証は若い人しかいません。附子が入っていないのです。私のところに来 るのは大部分が40歳前後です。大抵、発症してしばらくあ ちこちの医療機関にかかって、初めは弱い薬、そしてNセイ ドになり、胃腸を悪くしてステロイドに変更され、この頃はステロイドは怖い薬だと言うことを知っていますから、何とかならないかといって私のところに来る というパターンが大部分です。

苡仁湯を使うときは、ほ とんどの場合附子を加えて苡仁湯加附子という処方 になります。私のところで附子を加えないで苡仁湯だけを処方してい る人は1人か2人 です。インフルエンザのように外から寒邪が入る急性炎症の場合は絶対に温薬を使わなければなりませんが、内から出て来る急性炎症の場合はNセイドを使っても良いのです。この場合の急性炎症は熱と痛みですからNセイドを使っても副作用は出ないのです。慢性炎症は痛みと冷えがあり、し ばしば血行障害があり、場合によっては水の停滞があります。ところが西洋医学的治療はこれにもNセ イドを使ってしまいます。そうすると炎症に対しては良いのですが、体はますます冷えます。一番冷えるのは胃でしばしば胃に潰瘍を作りますし、血行不良を起 こし、手足のむくみをもっとひどくします。冷え、血行不良、むくみを解消しようとしたら、西洋医学はステロイドしか持っていないのです。しばしば強いステ ロイドを使っておかしくしてしまいます。ステロイドは一応炎症による冷え、血行不良、むくみは解消しますが、副作用を考えると全然割りに合わないですね。苡仁は水に働き、いつも 言うように血にも働いていると思います。血に働くと言うのは私だけなのです。だから一応括弧でくくります。

生薬図鑑にも一切、血に 働くと書いていないからあまり言えないのです。でも効き目を見ているとやはり血に働くと思っています。表向きは水ですね。麻黄は水に働き温めます。朮は水 に働き、当帰は血に働き温めます。芍薬は血に働き、桂枝は水と気に働き温めます。甘草も温めます。附子は大熱と言って大いに温め痛みを止めます。こう見て くると苡仁湯加附子は慢性炎症 の炎症、痛み、冷え、血、水の治療の全部を満たすのです。しかも帰経を考えてみれば解るのですが、苡仁、麻黄は太陰、朮は 少陰、当帰はどちらかというと少陰、芍薬は肝、桂枝は太陰から少陰の水の道に作用します 甘草は十二経、附子は厥陰から少陰で三焦経の薬と言われていま す。 この様に三経に作用してバランスがとれています。これは重要なことです。慢性の炎症が続いて筋肉や関節の痛みが続いているときは筋肉の衰えと筋腱の 働きが衰えたために骨が支えられなくなっているのです。筋肉を養っているのは脾で筋腱を調節しているのは肝です。骨を支配しているのは腎です。

要するに慢性炎症が続い てずっと進んでくると、必ず、この三つがやられているのです。私のところに来るぐらいの人は必ずこの三つがやられているのです。

稀に二つの人がいます が、診療の場を山奥に移せば移すほど、こういう人が来るのです。山部にいた時はこういう人は45割ぐらいでしたが、今のところに来てからは8割がこういう人達です。三経がやられている人は少し深くなっているので苡仁湯が効くのです。  当帰は体の深いところに働きます。苡仁もやや深いところに 作用します。苡仁湯に附子が加わる と、主として下半身の痛みを訴える人によく効きます。これは1臓 診断はできません。でも主は脾にあるのか、肝にあるのか、腎にあるのかは解ります。それを診断してその穴に鍼治療をすれば2週間でその効果は必ず解ります。診断するには脈診や望診もありますが、筋 肉が衰えているのか.(脾)、骨がもろくなっているのか(腎)、筋腱の動きが悪くなっているのか(肝)も参考になります。

ちなみに言うと「動か す」というのは本当に大切なことです。整形外科は極く最近まで、痛いなら動かすなと言ってどんどんダメにしてきたのです。動かさないでいてダメになったら そこを人工関節にしますよというのは治療というのかどうか。例えば脳卒中の寝たきりの人は、リウマチでなくても動かさなかったら関節がダメになるのはあた り前ですね。それと同じ事を医者がやって来てしまったのです。最近整形もだいぶ変わってきました。骨粗鬆症と取り組んでいる整形の先生は動かそうと言いま す。骨粗鬆症の場合ははっきりしています。動かさないとどんどん進行するということは解っています。そういうものに取り組んでいる先生は、どんな患者さん も出来るだけ動かしたほうがいいと言います。動かしていると、最初にスライドでお見せしたように、膝関節の隙間が狭くなっていても開いてきますし、肘関節 もそうです。股関節等はほとんどつぶれていたのが、きれいに関節面が出て来たような人がいくらでもいます。動かさないと軟骨はなくなるのです。動かしてい れば必要に応じて軟骨は又戻ってきます。実際私のところに来た患者さんは私が他動的に痛がるところまで動かして、この様に動かすのですよと指導します。動 かしていると必ず戻ってきます。

苡仁湯はよくバランスの とれた処方であることが解るのです。附子を入れない苡仁湯は、意外と作用範 囲が狭くてあまり使われていないのですが、附子を加える事によって非常にバランスのとれた良い薬として、慢性の炎症が進行して深くなって下半身に強い症状 のある人によく使いますし、よく効きます。

ちょっと素直でない人で 上半身に症状を強く出す人もいますが、一般的に深くなると下半身に症状が出やすいのです。下半身のほうが陰ですからね。

次は七物降下湯ですが、 抑肝散と一緒に話した方が解り易いと思います。両方に共通して入っているものは釣藤釣、当帰、川芎です。それに七物降下湯は四物湯の変方ですから、地黄、 芍薬があり、なぜか黄耆、黄柏が入っています。抑肝散は四逆散の変方ですから、重要なものとして柴胡が入っており、更に朮苓組が入っております。表向きは こうなのですが、じやあ似た薬かというと実は全然違うのです。でも理解するにはこの様に比べると解りやすいのです。七物降下湯は少陰の薬です。どちらかと いったら腎ですがまれに心です。抑肝散は当然、肝です。七物降下湯と抑肝散のほかに、もう一つ釣藤散の三つが高血圧の薬です。釣藤散は太陰です。七物降下 湯は四物湯の状態です。

四物湯の状態というの は、腎が不足すると心火が上り、腎陰が不足すると肝陰も不足するので、肝陽もちょっと上ります 肝心火旺となり、本当は衰えているのにすごく元気そうに顔 が真っ赤になってしまうのです。歳をとって赤ら顔になって血圧が上り、検査をするとしばしばクレアチニン等が上っている人が七物降下湯の適応です。腎性高 血圧に使うのですが、なかなか難しいとテキストにも書いています。でも最近、釣藤鈎を原末で加えたら、この七物降下湯で腎性高血圧もかなりうまくいく事が 分かってきました。腎性高血圧は西洋医学でも難しいのです。例えばむくみを取ろうとして利尿剤をやるとクレアチニンが上って来るのですが、その割に血圧は 下がって来ないのです。ディオパン等もありますが、言われるほど効くとは思えないし、少なくとも腎不全の進行は止められません。ああいう薬はー時的に腎の 血流を増して血圧も下げるような気がしますが、どうもどこかで腎に負担をかけているような気もしますね。うまくやって行くと漢方だけ使うほうが進行が止ま るような気がします。七物降下湯は四物湯が主として腎陰の衰えに作用し、降圧作用と鎮静作用のある釣藤鈎が入っていますが、この釣藤鈎はエキス剤にすると 鎮静効果はありますが、降圧作用は弱くなるのです。ただ、釣藤鈎を原未にすると飲めない人がいます 天麻は中枢性の降圧作用がありますが、これも飲みにく いのです。それで天麻3、釣藤鈎2、菊花1ぐ らい別に出して振り出しにして上澄みだけを飲む様に指導しますと結構飲んでくれる場合もあります。これでもかなりの降圧効果や鎮静効果があります。菊花は 脳の血流を増加させる作用もあるようです。この三つの薬は抑肝散にも釣藤散にも加えることが出来ます。七物降下湯は少陰の薬ですが、抑肝散は厥陰の薬で す。釣藤鈎、当帰、川芎は共通しており、それに柴胡、朮、茯苓が入っています。柴胡は柴組ではなく、単独の柴胡 ですからトランキライザーです。茯苓は精神を癒します。抑肝散は四逆散の変方ですから、神経過緊張の為に血圧が上っているのを治します。七物降下湯の高血 圧は少陰ですから、今飲んでいても薬を止めると上りますが、抑肝散の高血圧は意外と治り切ります。場合によっては白衣高血圧のこともあります。そしてこの 三処方は少陰、厥陰、太陰の特徴がはっきり出ます。釣藤散の人は朝のうちは頭が重いのです。釣藤散証の朝の頭痛は太陰であるために起きるのです。朝、頭が 重くて動けないのに無理して動いていると血圧が上るのです。抑肝散の人は朝、元気良くて、夕方ぐらいになると疲れて血圧が上ってしまうのです。血圧だけの 問題だったら天麻や釣藤鈎や菊花を加えてやれば良いのです。ただ七物降下湯はどちらかと言ったら、高血圧や脳卒中や老人性の循環障害だけに使いますが、抑 肝散は高血圧の他に、トランキライザーの作用が強いので心因反応的な疾患に良く使われます。

それともうーつ私のとこ ろで非常に多く使うのはリウマチにです。これはほとんど抑肝散よりも抑肝散加陳皮半夏として使います。リウマチの患者さんで四逆の状態が出る人が非常に多 いのですが、そういう患者さんに使います。こういう人は脈をとっても原穴の反応をとっても間違いなく肝の人で、手足に痛みを訴える人はリウマチ反応が間違 いなく引っかかっています。その逆もあるのです。手足の痛みを訴えてリウマチ反応が陽性の人は何故か肝の人が多いのです。そして四逆の状態の人が非常に多 いのです。手首と足首の先が冷えています。大抵の場合は汗ばんでいます。そして四逆である為にはお腹が温かくなければなりません。手足が冷えて汗ばんでい てもお腹が冷えている場合は、同じ四逆でも四逆湯になります。四逆湯の人にこういう攻める薬を使ったらえらいことになります。そのことについては又別の機 会にお話します。心因反応で抑肝散の適応の人も四逆があるのは同じです。ストレスがかかると手足が汗ばむのは普通ですが、いつも汗ばんでいるのは肝の人で す。今までの東洋医学では、本来はリウマチには柴胡剤を使わないのです。ほとんどの本には柴胡剤は使ってはいけないと書いてあります。私のところでは敢え て使っでいます。リウマチ性疾患に柴胡剤を使っているのは、私のところだけだろうと思います。それでとにかく揺さぶって戦わせるのです。戦いが始まった時 にそれを緩和する手段を持っていないから使えないのです。例えば耳鍼だったら肝の位置に鍼をすればかなり症状を和らげてあげることが出来るのです。最近で は早い人でー年、長い人は二年半ぐらいでリウマチの闘いのピークが過ぎて行きます。炎症反応やRAHAが ピークを過ぎて正常化します。先程言った苡仁湯と抑肝敢加陳皮半 夏と附子の組み合わせが非常に多いのです。釣藤散は他二方と似た症状に使う太陰の薬だということを覚えておいて下さい。又その時にお話します。

抑肝散についてはもうひ とつ大切なことがあります。抑肝散の場合、母児同服とごいうことがあります。私は小児科ではないのであまりたくさんは診ていないのですが、やってみた範囲 で言うと小さい子供は本来は抑肝散の証にはならないのです。薬味を見れば解ります。釣藤鈎とか当帰とかいうのは大人になっての慢性状態でないと使わない薬 です。母児同服の状態になるのは、いわゆる疳の虫とかヒステリー状態になってなかなか治らない場合、子供に飲ませるだけでなくて、お母さんによく話をして お母さんにも飲ませると非常に良くなる場合が間違いなくあります。これは何なのかと言うと、子供が病気なのではなくお母さんが病気なのです。お母さんは子 供を心配して連れてくるけれど、病気はお母さんなのです。お母さんが病気だから子供にも同じ状態を作ってしまうのです。

子供が出発で神経過敏に なるのであれば四逆散で充分なはずなのですが、お母さんの感情移入の為に抑肝散の状態まで深くなってしまうのです。母児同服というのはいろいろな本の抑肝 散の項に書いあります。それはお母さんが病気なのですからそこを納得してもらう必要があります。これは難しいのですね、お母さんは子供を診てもらいに来た のに何で自分のことを言われるのだということですね。けれどもじっくり話をして、お母さんに余裕がなくて、いろいろな気持ちの焦りなどがあって子供に負担 をかけているのだということを、お母さんが納得してくれると案外飲んでくれるのです。お母さんも一緒に飲むと必ず子供が治るから、子供を良くしたいのであ ればお母さんも一緒に飲もうと言って飲んでもらいます。小児科だったらそういう症例が結構あると思います。私のところでは小児科を表に出していないので、 来る子供の患者さんは喘息やアトビーが多く、数少ない経験ですが、母児同服と言うのは全部お母さんの病気です。小児科の先生は納得されると思います。ただ それをお母さんに納得させるのは難しいのです。抑肝散について、より虚しより水性を帯びると抑肝散加陳皮半夏の証になると書いてある本がありますが、どち らかと言うと間違いですね、抑肝散よりも抑肝散加陳皮半夏の方が虚していると言うのではなくて、むしろ深くなった感じですね。抑肝散の段階では四逆や神経 の緊張はあっても、柴胡剤でありながら舌を見ても苔がないことがあります。ところが抑肝散加 皮半夏の状態になると、やはり白苔とか場合によっては少し黄 色い苔になることもあります。もちろん水性を帯びることもありますが、朮、茯苓は抑肝散にも入っていますから、必ずしもそうは言えません。陳皮、半夏は気 を動かします。だから抑肝散加陳皮半夏は抑肝散より気うつの状態がひどくなっている証です。段々ストレスが亢じてきた状態で、見た目には前よりも気力が落 ちている様に見えるので虚しているように思えるかも知れません。でも、いわゆる実証とか虚証とかいうのとは違うと思います。むしろ抑肝散よりも抑肝散加陳 皮半夏まで行った人の方が、単に体が強いか弱いかと言ったら、抑肝散加陳皮半夏まで行ける人の方が強いのかもしれません。そこまで頑張って疲れ果てている のです。だから現実には抑肝散は若い人でまだ発症間もない人の方が多いのですが、私のところで実際にリウマチなどに使うのは、抑肝散加陳皮半夏の方が圧倒 的に多いのです。やはりストレス社会になった為に、肝にからんでリウマチになる人が多いのです。リウマチは、肝にからむから女性のリウマチは更年期に発症 し易いのです。女性が更年期にリウマチが発症すると9割ぐ らい肝です。やはり卵巣機能が衰えるから発症するのです。

痛みの発症するところは 厥陰肝経、少陽胆経、厥陰心包経、少陽三焦経の経絡上です。例えば指を痛がっている患者さんはほとんど示指、中指、環指の三本です。親指に出るのは太陰で 小指に出るのは少陰ですので、この二本にはほとんど出ません。

足の場合は足の裏で別れ ることが多いのです。足の先は厥陰で真ん中が少陰でかかとの部分が太陰です。

そういう症状の出る場所 でも診断できるのです。何故かリウマチの9割は肝なので す。だから女性の更年期に発症することが多いのです。初発症状は40歳 過ぎが圧倒的に多いのです。厥陰肝経は卵巣を通りますから、卵巣機能が落ちる時に何らかの意味で肝のガードが落ちるのです。だから、リウマチで肝と診断し たならまず耳鍼で肝の位置に鍼をして、抑肝散加陳皮半夏等の薬を出してみて下さい。必ず何か変化があると思います。来月までに少しでも使って手ごたえを掴 んでみてください。

何か質問をどうぞ。

 

質 問

三重円の図の気、血、水 について

答 え

一度は説明したと思いま すが、気、血、水は本来は平行概念ではないのです。気、血、水は全体に影響するのですが、例えば腎は水を主るとか肺は気を主るとか言われるように、強いて 言えばよりそれぞれの位置にシフトするよという意味で書いてあります。気、血,水がその円の中に書いてないのはそのためです。

 

質 問

インフルエンザの治療に ついて

答 え

お腹に来る人は脾に弱い ところがあります。その場合は脾に直接効かせるというよりも柔肝益脾が必要で、例えば芍薬甘草湯を葛根湯に加えて使う等したら良いです。喉が痛い人は喉で ガードしようとするのです。そのとき咽頭部から中に入れないために桔梗湯を併用することがすごく良いのです。前もって桔梗湯を併用すると意外と咳も出ない 場合が多いです。咳がついてしまったら麻杏甘石湯やあるいは大青竜湯(エキス剤では麻黄湯と麻杏甘石湯を合方する)などを併用することになると思います。 今年は葛根湯が多いですね。大流行するというのはそういう事なのですね。あまり流行らないときはインフルエンザは麻黄湯なのです。だからきちんとやれば何 もアセトアミノフェンを使うこともないのです。

 

質 問 

越婢加朮湯の使い方につ いて

答 え

越婢加朮湯の場合、慢性 疾患に使うときは、そのままでは石膏の冷やす作用がありますので、昔からやられている様に附子を加えて使います。石膏の冷やす作用は麻黄や桂枝の温める作 用では足りないですね。よろしいですか。それでは来月ですね。どうもありがとうございました。

 

耳 鍼(種のはり)の注意点

         耳の「つぼ」に植物の種 を張ってあります。

         1日数回、或いは症状の有 る度に種を上からもむように押して、痛みの刺激を耳に伝えて下さい。(家の人にもんでもらうと、更に効果的です。)

         痛みが強すぎる人、種を 貼っているだけでも痛む人は、反応の強い人です。その場合は種を取り外してもその部分には刺激が残るはずですので、指先だけで刺激すれば充分です。(早期 に種が取れた場合も同様です。)

         水に濡らすと取れやすく なるので、入浴・洗髪時注意して下さい。

         片側約2週間は有効です。

         自宅での押しかたの注意
耳鍼の説明に
で印を付けた部分は他よ りも弱くもむか、半分の回数もんで下さい。一番痛い方に向かって押せば「つぼ」に当たります。必ずついている方向に押して下さい。(斜めに押さない)特に 「交感」という「つぼ」は左図のように付いています。指を入れて図のように押して下さい。また腎の「つぼ」は下から上に向かって、内分泌の「つぼ」は上か ら下に押す形になります。

         本物の鍼:(円皮針)を 「つぼ」に刺入した場合は、もまないで下さい。

 

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