第10回 漢方ベッドサイド講義


症例1 : 32歳・女性(喘息)

 3歳から小児喘息。しばらく症状なかったが、20歳で就職のストレスから再び症状がでた。
 毎年春と秋に大きな発作あり、かつて一度、呼吸停止があったため、普段は、吸入と気管支拡張剤使用。
 発作の予兆があったとき飲むように、プレドニン4錠所持している。最近の発作は11月20日。
 11月に初診され、神秘湯を処方しています。

(下田先生)
  春と秋とどちらの発作がつらい?

(患者さん)
  秋。

(下田先生)
  冬のはじめの喘息は痰がいくらでも出るような感じ?

(患者さん)
  ひどくなると痰も鼻も出る。鼻がいつも詰まっていてので口で呼吸するとひゅうひゅう音がする。

(下田先生)
  逆に、春の咳は空咳のような感じ?痰がなく、ただヒーヒいう感じ?

(患者さん)
  はい。

(下田先生)
  聴診すると、吸うときにstriderがある。発作起こしたときは、吸うときと吐くときとどちらがつらい。

(患者さん)
  吸うときです。

(下田先生)
  吐くときに泡みないな痰がでる?

(患者さん)
  そうですね。

(下田先生)
  子供の時はどうだった?

(患者さん)
  風邪をひくといつも入院していたようです。小・中学生はそれほどでもなかった。

(下田先生)
  お子さんは?

(患者さん)
  いません。

(下田先生)
  初潮は早かった?

(患者さん)
  遅かったです。高校に入ってから。

(下田先生)
  アレルギーの検査はした事がある?

(患者さん)
  高校の時に、12種類の検査をして、反応がなかったのは2種類だけ。
  20歳過ぎで検査した時は、卵、ヨモギ、ハウスダスト、犬猫など50%を越えていた。

(下田先生)
  ということは、アレルギーでない。
  本当のアレルギーなら大抵1~2種類の反応だから、何種類も反応がでるということはアレルギーを作りやすい体質なんですね。
  つまり、何かでかぶれるのではなく、何にでもかぶれる体質ということ。
  どうも腎咳くさい。もちろん、肺も腎も弱いのだけど特に弱いのは腎のような気がする。
  だから、本来なら肺が気をまわして粛降していくんだけど、春先は肺の力が足りなくだけだから、
  要するに粛降する力がちょっと落ちるだけだから空咳ですむ。
  冬場は(本人は秋といってるが24節気では立冬が過ぎて、もう冬の身体になっている)、腎がいっぱいになっている、
  一番腎に負担がかかる時期だから、要するに腎が受けれなくなっているから、肺に水が溢れてくる。

   ● 舌診 : 今はおさまっているから、違うけど、恐らく秋は小青竜湯の舌なのでしょう。悪血がちょっとある
   ● 脈診 : 腎の脈
 
  足が冷える? 生理痛は?

(患者さん)
  足は冷える。

(下田先生)
  深く息を吸うとせき込む?

(患者さん)
  はい

   ● 腹診 : 当帰湯なら当帰芍薬散のようなお腹している。下腹部はちょっと冷たいでしょ。
           腹直筋はあまり張っていないけど。心下にちょっと圧痛あり、間違いなく衝脈にある。
           顔をみると、すこし気の上衝がある。
   ● 原穴反応 : 腎、肺

  鍼は少陰→衝脈→尺沢
  耳鍼は対屏尖、交感、内分泌、腎上腺を取穴

  たぶん、この人は親からもらった先天の気がちょっと少ない。
  今、大事なことは運動すること、歩くこと、エアロビクス(有酸素運動)です。
  とにかく、酸素を取り込むこと(後天の気)。
  (体鍼後、呼吸音の改善あり)、腎咳ですね。腎咳はほとんどの西洋薬が効かない。フルタイドはすこし効く。
  ホクナリンテープを使う。当帰湯と麻黄湯、今舌に水がないので小青竜湯は使わないが、
  発作時に小青竜湯合麻杏甘石湯を使う。あと、犬血があるので、サフランをちょっと使ってみる。
  漢方薬、鍼、有酸素運動で良くなるでしょう。


症例2 : 42歳・男性(腰椎椎間板ヘルニア)

 左臀部痛から下肢痛(後面)、しびれと歩行時痛

(下田先生)
  今まで診てきた椎間板へルニアは、大抵は少陰経なんだよね。

   ● 脈診 : 腎だね。
   ● 腹診 : やはり、少陰経だね、きれいに正中芯がでている。紐状に触れる(少腹に圧痛ある、ちょっと冷たい)
   ● 原穴反応 : 腎>肝、帯脈(三経が緊張しているから一見、緊張していないようにみえる、曲池に圧痛あり、そうだね)

(患者さん)
  116kgの体重あったが、96kgに減った。実は血圧も高くて、このままでは死ぬよと言われて、
  入院中、一日1600kcalで減量していた。

(下田先生)
  汗もかきます?

(患者さん)
  はい。

(下田先生)
  それじゃ、わかりやすい。七物降下湯、ヨク苡仁湯、附子でいい。
  七物降下湯などに含まれる黄耆はソウ理の働きを調節するから皮膚の乾燥でも汗かきでも良い。
  葛根加朮附湯とかヨク苡仁湯は帯脈のときの基本薬です。ヨク苡仁そのものは free radicalに対する抵抗性を高める、
  疣取りとか外から入ってくる悪い物に対して防衛する働きをする。
  今、せっせと試しているのだけど、ヨク苡仁だけにして粥にして食べてもらうと結構よい。

 取穴:少陰→帯脈

(患者さん)
  軽いです。しびれもない。

(下田先生)
  七物降下湯、ヨク苡仁湯は10g、附子は1gから加える。左側に症状がきているということは、
  血の病証が少し絡んでいることだから、もし飲めるなら、サフランを少し飲んだ方がよい。気の病証は右にくる。


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